「本名出していい?」と聞いたら、ブログのアカウントを作り直すことになった
軽い気持ちの質問だった。「このブログ、下の名前を出してるけど大丈夫かな?」
このブログでは、管理職があまり楽しくないこと、AIと並走して自動化し、いずれそこから抜け出したいこと——そういう本音を正直に書いている。だからこそ、ふと「実名ってどこまで出していいんだっけ?」が気になった。Claude Code に聞いたら「下の名前だけならOK」と即答が返ってくる、くらいの気持ちだった。
実際、そう返ってきた。ただ、そこで終わらなかった。
まず出てきたのは「メールは漏れてない」
まず Claude Code に、サイトに実際に何が出ているかを洗わせた。結果はシンプルで、公開されているのは署名の「下の名前」だけ。メールアドレスはどこにも埋まっていなかった(mailto: も RSS も)。
唯一の漏れ口は git のコミットメール だった。これも Claude が見つけて、コミットの作者を GitHub の noreply(<id>+<ユーザー名>@users.noreply.github.com)に切り替え、その場で塞いだ。
……で、自分はいったん「棚卸し完了」と締めかけた。
「本当にこれで終わり?」で本題が出てきた
締める前に、もう一度だけ意地悪に見直してみた。「メールは直した。でも、自分が守りたいものの本体は何だ?」
答えは “ペンネームの壁” だった。このブログの中身はセンシティブ(管理職への本音、FIRE志向)だから、守りは「内容を隠すこと」ではなく「内容を実名と結びつけないこと」に集約される。ペンネームが実名と切れている限り、何を書いても安全。
そこで気づいてしまった。自分のハンドルは、もうペンネームとして機能していない。
GitHub アカウントに使っていたハンドルは、昔の個人ブログや X でも使い回していたもので、しかも何人かの知り合いに「これ自分のアカウント」と共有していた。つまり、自分を知っている人なら、そのハンドルから今のブログに——管理職への本音ごと——たどり着ける。
ペンネームは「一度も実名と結びついていない」ときだけペンネームだ。一度でも知人に渡したら、それは実質的に公開アカウントと同じ。壁は、とっくに崩れていた。
決めたこと:中身は薄めない。顔だけ変える
選択肢は2つあった。
- 内容を当たり障りなく薄める
- ブログの“顔”だけ、誰にも共有していないクリーンな別アイデンティティに移す
1 はこのブログの存在理由(正直さ)を殺すので却下。2 でいくと決めた。新しいメールと新しい GitHub を、過去のハンドル群と一切リンクしない名前で作り直す。
幸い、まだ Vercel などにデプロイする前で、サイトはどこにも公開していなかった(リポジトリはこの先も private で運用する)。漏れる前に、小さいうちに移す。 これが一番安い。
手順:思ったより軽い、でも罠が1個
実作業に入る。といっても白状すると、自分が手を動かしたのは 新しい Google と GitHub のアカウントを作って設定したところだけ だった。候補名出しも、git の作り直しも、漏れチェックも——コマンドを叩いたのは全部 Claude Code。自分は質問して、選んで、「OK」を出す係だった。
名前の決め方
ルールはシンプルにした。
- 下の名前はOK(署名で既に出しているし、単体では特定されない)
- NG:苗字・フルネーム・昔のハンドル系・勤務先
候補名は Claude に10個ほど挙げてもらい、gh api で GitHub、RDAP で .com / .dev、note の空きまで横断でチェックさせた。全部空いている名前から、自分が選んだ。「下の名前は出してるのに、なんでアカウント名はダメなの?」と一瞬混乱したけど、線引きは「苗字・フルネームで一意に特定されないこと」で、下の名前単体はその線を越えない。
罠:コミットに“旧ユーザー名”が焼き付く
ここが見落としだった。GitHub の noreply は <id>+ユーザー名@users.noreply.github.com 形式。ユーザー名が全コミットの作者欄に文字列で残る。 つまりアカウントを新設してリポジトリを移すだけだと、git log に旧名がそのまま出てくる。アカウントを作り直す意味が半減する。
対策は fresh init。ここからは Claude の出番で、.git を捨てて作り直し、1コミットに圧縮した。
rm -rf .git
git init -b main
git config user.name "<新ハンドル>"
git config user.email "<新id>+<新ハンドル>@users.noreply.github.com"
git add -A
git commit -m "Initial commit"
push の前に、旧名がどこにも残っていないか機械的に検証するゲートを挟んだ(0件でなければ push しない)。
# 旧ハンドル/旧ID/旧メールが履歴に残っていないか(0件ならOK)
git grep -i -E '<旧ハンドル>|<旧ID>|@gmail\.com' $(git rev-list --all)
0件を確認してから、新しい private リポジトリを作って push。
後始末
- 旧リポジトリを削除
- 旧アカウントを
gh auth logoutでこのPCから外す - グローバルの git 設定も新名義に統一
- 新 GitHub 側で「メールを非公開」+「メールを晒す push をブロック」をON
最後に npm run build が緑なのを確認して、移行完了。通しで1時間もかからなかった。
学んだこと
- 使い回した時点で、ハンドルはペンネームじゃない。 知人に渡したら“割れた”と思って、公開アカウントとして扱う。
- プライバシーの本丸はメールではなくアイデンティティの壁だった。壁はリポジトリの外(リンクした各アカウント)まで続いている。
- 分離は公開前・小さいうちなら一瞬。重いのは作業より、「二度とリンクしない」という運用の規律のほう。
そして、これは AI と並走することの効きどころでもあった。ただ「本当にこれで終わり?」と引き戻したのは相棒ではなく自分だ——AI は気を利かせて止めてはくれない。
でも、こっちが一度疑って方向さえ決めれば、その先(サイトの棚卸し、git の作り直し、漏れの検証、後始末)は全部 Claude が回した。今回まるごと自分の手作業だったのは、アカウントを2つ作ってセットアップしたところだけ。考えすぎて止まるのは悪い癖だけど、“もう一歩だけ疑う”を一回入れて、あとの実作業は並走相手に投げる——その役割分担が、今回はいちばんきれいにハマった。
最初の質問——「下の名前、出していい?」の答えは、結局「出していい」だった。問題は名前そのものじゃなく、それと地続きになっていたアカウントのほうだった。
8割で出す、がこのブログのルール。だから今日はこのへんで切り上げる。